大月簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人を罰金弐万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五百円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
押収にかかる「大月市の皆さん、伊東さんの真の姿を御存知ですか」と題するビラ百七拾八枚(昭和三六年押第一号の一乃至八)はこれを没収する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、昭和三六年一月一四日午後八時頃より同一〇時頃迄の間大月市内において、情を知らない田中組の幹部渡辺良雄及びその命を受けた秋山実、中村久、小俣幸信をして、翌一五日施行の大月市長選挙の候補者である伊東〓長に関し「同候補者は教育長在職中市役所の女子職員を次々と毒牙にかけて多くの娘の貞操を奪い、その中の一人を高月通りにかこつておいたが、最近市長選に出るため世間をはばかつて富浜町袴着の実家へ帰し、よなよなハイヤーで通つている」旨及び「同候補者は以前ヒロポン中毒、現在モルヒネ中毒患者である」旨の事実を記載した「大月市の皆さん、伊東さんの真の姿を御存知ですか」と題するビラ約一七八枚を撒布せしめて一般市民である佐藤貞義等多数人に頒布させ、よつて公選による公務員の候補者に関し公然事実を摘示してその名誉を毀損したものである。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法第二三〇条第一項罰金等臨時措置法第三条第一項第一号に該当するところ、所定刑中罰金刑を選択し、所定額の範囲内において被告人を罰金二〇、〇〇〇円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法第一八条により金五〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、押収にかかる「大月市の皆さん伊東さんの真の姿を御存知ですか」と題するビラ一七八枚(昭和三六年押第一号の一乃至八)は本件犯行に供したものであり且つ何人の所有おも許さぬ物であるから同法第一九条第一項第二号によりこれを没収することとし、訴訟費用については刑事訴訟法第一八一条第一項本文を適用し、全部被告人に負担せしめる。
(訴訟関係人の主張に対する判断)
弁護人は被告人の判示所為は公選による公務員の候補者に関する事実を摘示したものであつて、且つ摘示事実は真実であるから、違法性を阻却すべきものであるとして無罪を主張するけれども、被告人の判示にかかる摘示事実が真実であると認めるに足る証拠はなく、真否何れとも判然しないこと前説示のとおりであるから、弁護人の右主張は採用できない。
よつて、主文のとおり判決する。(昭和三七年四月三〇日 大月簡易裁判所)